The Shape of Water 海外レビュー
カンヌ映画祭で上映されたThe Shape of Waterの海外レビューの抄訳です。
ネタバレ注意。
あらすじは、各レビューから掻い摘んでくっつけたものです。
あらすじ:
舞台は冷戦時代のアメリカ。
とある研究所でトイレの清掃人として働いている女性エリザは、ある日運び込まれた危険な両生類になぜか惹かれ、こっそり食事を差し入れるなど彼(?)と交流を持ち始める。しかし、研究所にとって彼はソ連に宇宙開発で勝つための実験動物。解剖の危機が迫っていることを知ったエリザは、同僚の黒人女性やアパートの隣人のゲイの白人男性の助けを借りて彼の救出を目指す。
レビュー:
◆ガーディアン
【ニュアンス】公式スコア:☆4/5
【抄訳】
- 掃除人の女性と魚型クリーチャーの恋愛劇withB級スリラー要素
- 60年代が舞台。ロズウェル事件や冷戦時代のパラノイアネタの扱いに戦後のモンスター映画へのオマージュを感じる
- が、過去のそういった類の映画に比べてハートウォーミング
- リアリティに欠ける部分もあるが、上手くそれをフォローしている
◆ハリウッドレポーター
【ニュアンス】訳者印象:べた褒め
【抄訳】
- クリムゾンピークとは対照的に、ビジュアルも人物描写も素晴らしい
- クリムゾンピークのイメージカラーは血の赤だったが、こちらは千変万化の緑
- 大アマゾンの半魚人を始めとした50年代ホラーの他、30年代40年代のミュージカル映画、クラシック・ノワール、聖書を題材にしたシネスコの大作(訳注:聖衣、ベンハーなど?)ネタも散りばめてあり、ただのオマージュ詰め合わせ作品以上のユーモアやファンタジー性を持たせている
- 異なる存在への非寛容について魚人、60年代のゲイ、黒人(訳注:当時の社会的弱者)を絡めて描いている
- 時代によって”良識”が変わっていく事への皮肉も込められていて良かった
- 物語の芯は主人公の女性と魚人との関係性。「ありのままの自分を魚人に認めてもらえた」という女性の発言をきっかけに、魚人救出作戦が始まる
- 普通のそれではないが、応援したくなるという意味では歴とした恋愛映画
- 主人公を演じるサリー・ホーキンスを始め、俳優達の演技も素晴らしい。ダグ・ジョーンズは感情ある生き物としての魚人を好演している
- 優し気なアコーディオン曲やクラシックミュージカルからの引用曲、アレクサンドル・デスプラのメロディックなBGMが脇を固める
- パンズラビリンス以来の満足行く作品
◆バラエティー
【ニュアンス】訳者印象:べた褒め
【抄訳】
- 今年公開されたほとんどのハリウッド映画よりもチケット代金に見合った出来
- 大人向けのおとぎ話。マッドサイエンティストが出てくるB級映画から冷戦ノワール、ミュージカルまで色々なジャンルをうろうろするが、根っこは意外にクラシックなラブストーリー
- パンズラビリンス以来の傑作
- 今季一番のデートムービーにお勧めでき…なくもないかもしれない
- クリムゾンピークに続くデルトロの恋愛映画の第二作目だが、こちらはずっとストレート。よくある”ガールミーツ神様かもしれない半魚人”モノ(訳注:ジョーク)
- 主人公を演じるサリー・ホーキンスが素晴らしい
- ファミリー向けにする事は容易だったろうが、性に対して率直にアプローチしたお陰で、主人公に浮世離れした雰囲気とは裏腹の現実的存在感を持たせる事に成功している
- 主人公を助ける二人の味方にも、物語が感傷的になりすぎないよう、随所で”普通の人っぽさ”を発揮させている
- 見てくれは奇妙でも、底に流れるテーマは”人間的な信頼”
- 撮影のダン・ローストセンや、美術のポール・D・オースターベリーの仕事ぶりも
素晴らしい。どちらも色使いや雰囲気の作り方が秀逸 - 主人公のアパートの下に、テレビに客を取られてしまい閑古鳥が鳴いている映画館がある。その支配人が廃業を予感しつつも、客欲しさから主人公に無料チケットを渡すシーンがあるが、これはNetflixが映画館の死を誘発しているのと重ねているのではないか
- とは言え、デルトロ監督のような映画人が本作のような、オリジナリティとエネルギッシュさを持つ作品を作っている間は映画館の死も杞憂だろう
雑感
日本公開が楽しみになる大好評ぶりです。
一方で、パンズラビリンスが引き合いに出てくるあたりデルトロ監督一流のアクの強さは健在なよう。
主人公の行く末が心配になる作品が引き合いに出されているものの、どのレビューもほっこりした雰囲気なのでハッピーエンドだと思いたい。
デートムービーにどうぞと唆しているレビューがありますが、アメリカでは性表現と暴力性でR指定での公開なようなので、ちょっと気を付けた方が良さそうです。